著/にしおか すみこ
本体1,400円+税 講談社
「母、80歳、認知症。姉、47歳、ダウン症。父、81歳、酔っ払い。ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。45歳、独身、行き遅れ。 全員ポンコツである。」帯に書かれた文が、この本の世界です。著者にしおかすみこさんの、なかなかに凄惨な実家の日常生活が描かれています。家族は皆、話が通じない相手であり、もっともよくわかる相手でもあり。「…家族って、生臭い。」(117ページ)と言いながら、家族だからこそ一緒に暮らしています。きたなくてくさくて無秩序で文脈のない日々。かわいそう、過酷、つらい、逃げ出したいと思うようなエピソードの連続なのに、「ふ」と笑ってしまう。それは笑うしかない、に近いかもしれないかもしれません。
18篇のエッセイの中で、ダウン症のある姉の登場シーンは少ないですが、「10姉のバタフライ」で話題の中心となります。この姉がいたから、にしおか家が繋がっているのかもしれません。「家族」を粘り強くやってきた人にとっては心強く、共感できるドキュメンタリーなエッセイです。
(JDSニュース編集/関川 香織)